FLINTERS Engineer's Blog

FLINTERSのエンジニアによる技術ブログ

チーム配属後の新卒への効果的なフォローアップの実践

こんにちは、チーム運営や組織論に関心強めな清水(@_smzst)です。みなさん、新卒社員をチームに迎えた後のフォローアップはどのようにしていますか?ここ数年はリモートが当たり前になったことで新卒・先輩社員ともにより一層苦労されているのではないでしょうか。

今回は所属していたチームで私が 2 年目から企画・運営していた秘伝の「新卒からのフィードバック会」について紹介したいと思います。何かの参考になれば幸いです。もし、ご意見・ご感想などあればお聞かせください。

1. 「新卒からのフィードバック会」とは?

「新卒からのフィードバック会」とは、チームに配属された新卒社員からチームにフィードバックをいただくという趣旨の場です。新卒社員の疑問ややりづらさを解消するとともに、フォローアップとして有効だった取り組みをチームで学習し経験値を高めることが狙いです。
ここでミソになるのが、①新卒社員を主役にすること、②チームで行うことの 2 つです。これら 2 つがなぜ重要だと考えるか以下に整理してみます。

なお、具体的な方法が早く知りたい場合はこのセクションは読み飛ばして、次のセクション「2. どのように実施していたか」から読んでいただいても構いません。

1-1. 新卒社員を主役にすること

端的に、新卒社員の意思表明のハードルを明示的に下げることが狙いです。これは、新卒社員からフィードバックを得ることがチームの改善・成長に繋がると捉え、フィードバックを歓迎していることを示すことによって意思表明しやすい雰囲気を作ることができると考えているためです。
なお、メンタリングにおいて、メンターからメンティーにフィードバックを求めることはメンティーに強い自己承認と自己効力感をもたらし、メンティーに対する存在承認*1を示すことに繋がります。これと同じようなことが新卒社員と先輩社員の間で起きることを期待しています。

みなさんが新卒だったころを思い返してみると、質問の仕方が分からないとか、この仕事の進め方でいいのか悪いのか分からないといった困りごとがいくつもあったと思います。ましてや専用の場でもなければ質問しようとも思わないような些細なこともたくさんあったと思います。
こういった業務を進める中で感じたやりづらさや気付きのフィードバックを得やすい場にするには、明示的にハードルを下げる必要があるのではないでしょうか。

1-2. チームで実施すること

端的に、新卒社員のことを先輩社員が認知していると業務が円滑になると考えているためです。
たとえば、質問の仕方を改善しようと取り組んでいることを知っていればその後押しをしながら関わることができますし、ある技術領域に関心があることを知っていればアサインするチケットを寄せることや社内の勉強会を紹介することができます。先輩社員にとってもノウハウを共有する場として機能します。

後から紹介しますが、この会では先輩社員から新卒社員に向けてよいところのフィードバックも行っていました。こうすることでフォローアップの担当者以外と仕事を進めたときにそのメンバーから見たよいところや、他のメンバーが気付かなかったよいところを伝える機会を設けることができるためです。
なお、このような良いところのフィードバックは、メンタリングにおける行動承認*2や結果承認*3を示すことに繋がると考えています。

このような相乗効果を狙うには 1on1 のような閉じた状況で実現するのはなかなか難しいのではないでしょうか。
※それはそれとして、複数人の前で挙げたくない話題もあるはずなので 1on1 のような一対一の場作りは別に必要だと思います。

2. どのように実施していたか

ここからは私がどのように会を実施していたかをご紹介します。こちらが自作のアジェンダ(原本のコピー)です。「BN」というのは要するに新卒社員のことを指します*4

新卒からのフィードバック会 アジェンダ

2-1. 書き出し

このアジェンダに沿って新卒社員と先輩社員で書き出しを行います。書記あるいは喋っている人がボトルネックにならないよう Google Slides や Miro を用いて並列に意思表明できる状況にすることをおすすめします。
また、書き出しが早く終わった先輩社員は新卒社員のトピックに回答したりアドバイスを書くなどして時間を有効に使いましょう。

新卒からのフィードバック会 書き出しのイメージ

2-2. 読み上げ

書き出しが終わったら読み上げを行います。テキスト上に表明されているので見れば分かりはしますが、テキストでは表現しきれないニュアンスがあることもありますし、読み上げ中に双方向的なコミュニケーションによって理解を深めるきっかけにも繋がるのでやる価値はあると考えています。
また、読み上げを聞いている間に👍とか🦀*5のような絵文字を添えて自ずから感じたことを表現していくことが、特に感情の窺いにくいリモート下においては大事なのではないかと感じています。

2-3. トピックの選定

書き出されたトピックから改善・継続ができそうなものを選定します。選定するポイントとして私はおおよそ以下のような観点で選定・優先度決めを行なっていました。1 については言わずもがなですが、2 も学びを生かして狙って取り組むことでチームをより成長させることができると考えています。

  1. 新卒社員が業務を進めるにあたって障害になっている・なりうること
    • 「フロントエンドにコンテンツが描画されるまでの処理の流れを知りたい」
      • ※知らないと触るときに障害になるため
    • 開発を進めるにあたって暗黙のルールになっていることや、仕事の振り方として改善の余地があると先輩社員が気付いた事象
  2. 新卒社員にとって業務を進める助けになったこと
    • 「ペアプランニングによってコードへの理解が深まった」
  3. 先輩社員にとって業務を進める助けになったことや改善の提案
    • 「動作確認のエビデンスが丁寧にまとまっていたため環境を確認する手間が省けた」

2-4. ネクストアクションの決定

前段で選定した 1, 2 に関してネクストアクションを決定しチームの認識を揃えます。これらは改善・継続に向けてチームが取り組めるものです。トピックの例でいえば、フロントエンドにコンテンツが描画されるまでの処理の流れをレクチャーする場を設けたり、ペアプランニングを実施できるようプランニングでアサインを検討します。
このとき、5W1H を現時点で決められるところは決め切ってはっきりとテキストで残しましょう。なお、準備が必要でこの会の中で決め切れない類いのネクストアクションの場合はチケットを切ってスプリントに積むのが最も時間的効率がよいと思います。

ただし、3 に関してはよかった点や改善点を伝えるまでにしておきましょう。特に改善点の深追いをしすぎると吊し上げになってしまいかねないので避けるべきです。新卒社員自身が課題に感じているようであれば 1on1 などの場を生かして改善を支援するのが賢明です。

2-5. Tips

このような感じでフィードバック会を行っていました。イメージは湧いたでしょうか?載せきれなかった Tips があるので紹介します。

  • 「なんでも書いていいよ」ではなく書き出す観点を例示すること
    • オープンクエスチョンすぎると何を書けばいいか分からなくなるので、上に掲載したアジェンダのように観点を例示する
  • 実施初期は週一くらいの短いスパンで実施し、新卒社員の意見を聞きながらスパンを広げていくこと
    • 実施初期は新卒社員にとって変化が激しいのでこまめに実施し、ある程度慣れてきたら不用意にミーティングを増やさないために頻度を下げる
  • 2 回目以降は前回のネクストアクションの確認から入ること
    • どういう取り組みをしていたかの思い出しや取り組んで成果が得られたのかどうかの振り返り、次どのような取り組みを行うか考えるきっかけ作り
    • ただ、生存期間の長いネクストアクションに関してはチームの抱える課題なことが多いのでレトロスペクティブの場に回してきっちり議論する方がいいかもしれない

3. さいごに

フィードバック会実施当初から会の目的や狙いがこれほど論理立っていたわけではありません。今回ブログを書くにあたって感覚的なものを言語化でき、私自身が会の目的や狙いを再認識する機会になりました。その上で私の取り組みを客観視すると省みざるを得ない場面を思い出すこととなり、まだまだ人間力が足りてないと感じた次第でした。

このブログを最後まで読んでいただいた方は長々とお付き合いいただきありがとうございます。ひょっとするとこういうチーム運営とか組織論みたいなことに興味があるかも知れませんので関連記事もよければどうぞ。

labs.septeni.co.jp

*1:相手が今ここにいることへの承認。受け手は「自分は必要とされているんだ」というような感覚を抱く。頼るという行動の他に挨拶をするといった行動も含まれる。

*2:相手がポジティブな行動をとったときに、その行動を言葉にして伝えること。

*3:相手の成果に対して言葉にして伝えること。「褒める」という感覚がこれに近い。

*4:セプテーニグループでは新卒社員のことを Brand New、略して BN と呼びます

*5:たしかに→たし蟹→蟹